私はこれまで2,000件以上のフィッティングを担当してきました。その中で感じていることがあります。
それは、フィッティングを受けた後に大きく成長する人と、そうでない人がいるということです。
もちろん機材の差や練習量の差もあります。しかし、長年ライダーを見てきて感じるのは、その差の多くは身体の使い方にあるということです。
フィッティングは大切です。サドルの高さや前後位置、ハンドルの位置、クリートの位置を調整し、身体に合った環境を作ります。痛みを減らし、力を出しやすくし、長時間走れる状態を作るために必要な作業です。
しかし、フィッティングだけで速くなるわけではありません。
なぜなら、自転車を進ませているのは機材ではなく人だからです。
私はフィッティングを「環境作り」だと考えています。機材と身体を合わせ、力を出しやすい環境を作る。しかし、その環境を使いこなすためには身体側の学習が必要になります。
同じポジションでも速く走れる人とそうでない人がいます。骨盤の使い方が違えば出力は変わります。股関節の動きが違えば疲労の仕方も変わります。上半身の支え方が違えば安定感も変わります。
実際にポジションを変えただけで劇的に速くなるケースはそれほど多くありません。むしろ新しいポジションに身体が慣れ、その姿勢を使いこなせるようになった時に初めて結果として現れることがほとんどです。
新しいサドル位置になれば使う筋肉も変わります。ハンドル位置が変われば上半身の支え方も変わります。最初は違和感があって当然です。しかしその違和感を乗り越え、自分の身体に新しい動きを覚えさせることでポジションは初めて意味を持ちます。
三ツ星フィットサービスでは、この過程をフォームビルディングと呼んでいます。
特別な技術を身につけることではありません。骨盤をどこで支えるのか、股関節をどのように使うのか、上半身をどのように安定させるのか、自分に合った動きを身につけることです。
近年は空力という考え方も広がり、フォームの重要性はさらに高まっています。低いフォームを作ることよりも、そのフォームで呼吸ができること、そのフォームで力が出せること、そのフォームで長時間維持できることの方が重要です。
私はフィッティングをゴールだとは考えていません。
機材を合わせることはスタート地点です。その後に身体の使い方を学び、自分のフォームを作り、その先にある速さへつなげていく。この流れがあって初めてフィッティングの価値は最大化されると考えています。
速くなる人は高価なパーツを買った人ではありません。自分の身体を理解し、自分に合ったフォームを身につけた人です。
フォームビルディングとは、フィッティングで整えた環境を本当の意味で自分の力に変えていく過程なのです。
